FX外国為替取引投資の基礎知識と始め方!

FXで取引できる通貨

 
いわずと知れた世界の基軸通貨
ここからは実際にFXで取引される通貨について解説しましょう。まずは、世界最大の経済大国であるアメリカの通貨、米ドルです。米ドルは、アメリカ国内だけでなく、石油や金など世界中で取引されている多種多様な商品の決済通貨として使われていて、その取引量は世界の通貨の中で最も多く、世界の基軸通貨とされています。

アメリカの政治や経済などの情報は他国と比べると入手しやすいので、どの通貨を取引するか迷っているFXの初心者なら、まず考えたい通貨の1つです。

金利政策、経済指標、要人発言をチェック
ドルに投資する際に注意しておきたい為替相場の変動要因は、金融政策、経済指標、要人発言などです。アメリカでは、中央銀行のFRBが経済や物価動向を安定させるために、政策金利の調整を行っています。政策金利を上げることを利上げ、下げることを利下げといいます。一般的に利上げはドル買い、利下げはドル売りにつながることが多いようです。
  
注目すべき経済指標には、非農業部門雇用者数、ISM製造業景況指数、小売売上高、貿易収支、GDPなどがあります。これらの指標がよければドル買い、悪ければドル売りになりやすいようです。政策金利と同じく発表される時間は決まっているので、ニュースなどで確認するようにしましょう。

また、為替政策がドルの動向に影響することが多いので、アメリカ財務長官やFRB議長、理事などの為替に関する発言にも要注意です。


 
米ドルに次ぐ取引規模を誇る
次は、欧州通貨統合によって1992年に誕生した新しい通貨、ユーロです。現在では、EU加盟27カ国のうち、ドイツ、フランス、イタリア、スペインなど15ヵ国で使用され、その国々はユーロ圈と呼ばれています。

実際にユーロの流通が開始されたのは2002年からですが、現在ではユーロ/米ドルの取引が世界で最も多く、米ドルに次ぐ第2の基軸通貨になっています。それだけに、投資家が米ドルを買うときは
ユーロが売られ、米ドルを売るときにはユーロが買われることが多く、ユーロは米ドルと反対の動きになりやすいのです。

ドイツやフランスの経済指標をチェック
複数の国で使用されているユーロは、欧州中央銀行(European Central Bank=ECB)と各国の中央銀行から構成される欧州中央銀行制度によって管理されています。各国の中央銀行は紙幣や硬貨の印刷流通を行いますが、欧州中央銀行だけは金融政策の策定をまかされています。欧州中央銀行で決定された政策金利がユーロ圏全体の金利となるため、ユーロに投資する際には欧州中央銀行の金融政策をニュースなどでチェックするとよいでしょう。また、ユーロの加盟国の中でも特に経済規模の大きいドイツやフランスの失業率やGDPといった経済指標に目を配っておきたいところです。

ユーロは対円や対米ドルで上昇を続けているため下落するリスクはありますが、政策金利が米ドルに比べて高いことに加え、取引数量が米ドルに次ぐ規模なので情報量も多く、比較的取引しやすい通
貨といえます。


 
高金利で値動きの激しい通貨
イギリスは、欧州連合(EU)に加盟していながら、欧州単一通貨であるユーロには参加していないため、通貨は独自のイギリスポンド(英ポンド)です。現在は米ドルが基軸通貨ですが、第2次世界大戦まではイギリスポンドがその座にありました。

イギリスはユーロを導入していないことから、ユーロ圈各国の経済状況に配慮することなく、中央銀行にあたるイングランド銀行がイギリス国内の事情のみで金融政策を実施しています。 2006年からは、インフレヘの懸念から政策金利を徐々に引き上げ、2008年には先進国の中でも5.00%と高い水準になっています。そのため、多くのスワップポイントが得られるとして、FXにおいて人気の高い通貨になっているのです。

また、値動きが激しい通貨でもあるため、スワップポイントを目的とした中長期の投資のほかに、為替変動からの収益を目的とした短期投資にも向いています。しかし、値動きが激しいということはリスクもともなうので、取引を行う際には過度に高いレバレッジでの取引は控えたいところです。

相場の変動要因は、やはり経済指標や要人の発言です。また、意外に思われるところですが、イギリスは北海油田を所有する世界第9位の原油輸出国であるため、イギリスポンドは原油価格の変動の影響も受けます。

将来的には、イギリスがユーロに参加する可能性は否定できません。もしそうなれば、イギリスポンドは売られるリスクも抱えていることになります。


 
高金利で資源国通貨として人気
オージーとも呼ばれるオーストラリアドル(豪ドル)は、政策金利が7.25%(2008年4月末時点)と高く、ニュージーランドドルや英ポンドと並んで高金利通貨の代表格です。また、オーストラリアは石炭や鉄鉱石などの世界最大の産出国であるため、インフレや原油高に強く資源国通貨とも呼ばれています。

豪ドル/円は、1999年から下げ基調で、2000年11月には対円で1豪ドル55円台まで下落しましたが、その後は健全な経済状態や景気回復を背景に反発。経済成長と金利差に着目した豪ドル買いも増加して、長期的な上昇トレンドが続いています。このような背景から、FXにおいても個人投資家からの人気が高い通貨です。しかし、米ドルやユーロに比べると市場規模が小さく通貨の取引量が少ないため、相場が一時的に大きく変動するリスクがあることは、頭に入れておく必要があるでしょう。

金融政策をチェックして今後の金利動向を探る
先述したように、鉱物資源に恵まれたオーストラリアでは、石炭や鉄鉱石に加えてボーキサイトや金などの輸出額が全体の4割程度を占めています。そのため豪ドル相場は、これら天然資源の輸出状
況や原油、貴金属などの商品相場の影響を少なからず受けています。

また、相場動向を探るうえでは、オーストラリアの金融政策をチェックすることも重要です。現在は安定している経済や金利状況ですが、常にニュースなどで確認するようにしましょう。オーストラリアの政策金利は、同国の中央銀行であるRBAが毎月第1火曜日に金融政策会議で決定しています。


 
豪ドルと運動する高金利通貨
NZドルと表記されるニュージーランドドルは、同国に生息している鳥にちなんでキウイと呼ばれることもあります。政策金利は8.25%(2008年4月末時点)と高く、豪ドルと同じく高金利通貨です。

ニュージーランドの主な輸出品目は、酪農品や肉類などの農産物です。そのためNZドル相場は、原油や貴金属などの商品相場の影響を直接受けません。しかし、最大の輸出先と輸入先であるオース
トラリアヘの依存度が高く、両国の通貨は同じような動きをする傾向にあります。

少ない資金から投資が可能
豪ドルやNZドルといったオセアニア通貨は、地理的にテロや戦争などの影響を受けにくく、現在のところ経済も安定しているうえに高金利であるため、FXではスワップポイントの獲得を目的として中長期の投資を行う個人投資家が多くいるようです。 1NZドル=83円(2008年6月末).なので、比較的少ない資金から取引できますが、NZドルも豪ドルと同様に、米ドルやユーロに比べると市場規模が非常に小さく通貨の取引量が少ないため、相場が一時的に大きく変動するリスクがあることには注意しましょう。

NZドル相場も、発表される経済指標や要人発言が主な変動要因になるため、ニュースなどでこれらのチェックは欠かせません。また、先にも述べたように豪ドルとの運動性が非常に強いため、オーストラリアの経済動向にも目を向ける必要があります。


 
石油埋蔵量第2位の資源国
カナダは、サウジアラビアに次ぐ世界第2位の石油埋蔵量を誇る天然資源国です。また、ウランや天然ガス、金など多くの天然資源の輸出国でもあることから、カナダドルは原油価格や金価格の影響を大きく受けています。 2005年以降は原油価格の高騰や高止まりを受け、対円でも大幅な上昇を続けてきました。

G7にも加盟し、財政収支と貿易収支ともに黒字を維持していることから、政治的にも経済的にも安定しています。しかし、豪ドルなどの資源国通貨に比べるとスワップポイントが高くないため、金利面の魅力から買われることはあまりありません。

アメリカ経済の影響を強く受けている
アメリカと国境を接するカナダは、1992年に北米自由貿易協定(NAFTA)に参加するなど、アメリカ経済と非常に密接な関係にあります。アメリカ向けの輸出が総輸出の8割以上を占めるまでになっているため、アメリカ経済が堅調なときはカナダ経済にも好材料を与えるとの思惑からカナダドルが買われ、逆にアメリカ景気が不調なときはカナダ経済に悪影響を及ぼすとの観測からカナダドルが売られることが多いようです。したがって、カナダドル相場の動向を予想するには、カナダの経済指標とともにアメリカでの金融政策や雇用統計などの経済発表もチェックするようにしましょう。

また、近年のカナダドルの相場は、資源国通貨としての特性がより強く反映されるようになっていることから、原油価格や商品市況の動向にも、よく注意する必要があります。


 
リスク回避通貨として特異な性質
永世中立国であるスイス連邦の通貨はスイスフランです。スイスフランの大きな特徴として、戦争やテロなどの有事に強いという点があげられます。つまり、他国で戦争が起きたとしても、独立と領土の保全を守る永世中立国という立場を明確にしているスイスは、戦争に巻き込まれる危険性が小さいことから、資金の逃避先として注目されているのです。

以前は、「有事のドル買い」といわれていましたが、2001年のアメリカ同時多発テロではアメリカ自身がテロのターゲットになってしまいました。このような経緯から、2003年のイラク戦争や2006年の北朝鮮によるミサイル発射などでは、有事の際の避難通貨としてスイスフランの特性が顕著になり、今では「有事のスイス買い」とまでいわれています。

スイスは永世中立国であることからEUには加盟していませんが、総輸出の60%、総輸入の80%が対EU諸国です。したがって、経済的にはEUと密接に結びついているため、スイスフランの値動きは
ユーロの協働きと連動する傾向があります。

スイスフランの金利はほかの通貨と比較して低水準であるため、豪ドルなどの高金利通貨のようにスワップポイントを狙う投資家は少ないようです。また、有事発生の際にスィスフラン相場は上昇しますが、時間の経過とともに国際情勢が落ち着いて発生したリスクが軽減していくと、投資家が資金を回収して相場が下がるという動きになります。したがって、どちらかというと短期的な投資の対象になりやすいといえるでしょう。


 
高金利通貨として人気も、値勤きの激しさに注意
高金利通貨として人気が急上昇している南アフリカ共和国の通貨はランドです。政策金利は11.0%(2008年4月)と、FXで取引されている主要な通貨の中ではトップクラスの水準にあります。

また、南アフリカは世界一の金の産出国で、ダイヤモンドやプラチナなどを含めた貴金属類が総輸出額の約4分の1を占めています。そのため、南ア・ランドはカナダドルや豪ドルと同様に資源国通貨の側面もあり、金価格の影響を受けることがよくあります。投資するときは、特にニューヨークの金先物相場の動向に注意が必要です。

このように高金利通貨と資源国通貨の性質をもつ南ア・ランドは、FXでも人気が急上昇しています。しかし、投資するには危険が大きい通貨であることも忘れてはなりません。経済発展が続いていて、今後も中国やロシアなどと並んで高成長が期待できる新興国と評価される一方で、周辺に政情が不安定な国が多数あることや20%を超える高い失業率など、リスク要因も併せもっているのです。

ここ10年間の対円の為替レートの推移を見ると、1998年に1ランド27円合だったのが、2001年末には9円まで一気に円高ランド安が進むなど、南ア・ランドの値動きはほかの通貨と比較しても非常に激しいことがわかります。したがって、南ア・ランドに投資する際には、ほかの通貨以上に取引のタイミングが大切です。また、商いスワップポイントは非常に魅力的ではありますが、スワップポイントを目的とした中長期の投資を行う場合には、レバレッジを低くして慎重に取引を行うことを心がけましょう。


 
米ドルの動きに運動
中華人民共和国の特別行政区である香港の通貨が香港ドルです。香港は、1997年にイギリスから中国に返還されましたが、返還前と変わらず独自の通貨を発行しています。

香港ドルの大きな特徴は、ドルーペッグ制を採用していることです。これは為替レートを一定の水準に固定する固定相場制の1つで、自国の通貨レートを米ドルに連動させる制度のことです。

1983年から導入されたドル・ペッグ制は、1米ドル=7.8香港ドルで発行されていましたが、2005年に通貨制度が変更されて1米ドル=7.75~7.85香港ドルの間での変動相場制に移行しました。しかし、非常に小さな幅での変動であるため、基本的には「香港ドル/円」相場は、「米ドル/円」相場と同じような動きをします。

ドル・ペッグ制という特徴のほかにも、中国の通貨である人民元に最も近い通貨として位置づけられていることから、今後人民元が切り上げられると、香港ドルも連動して切り上げられる可能性があるため、人民元の動きにも注意が必要です。

香港ドルの将来像は、依然として不透明なままです。このままドル・ペッグ制が維持されるのか、あるいは人民元と香港ドルの一国二通貨制度を継続していくのかなど、今後どのような制度に変更さ
れていくかによってその評価は変わっていくことでしょう。

ちなみに、香港ドルは他国のように中央銀行が発行するのではなく、香港上海銀行、スタンダード・チヤータード銀行、中国銀行の3つの民間金融機関によってそれぞれ異なる図柄の紙幣が発行されています。