FX外国為替取引投資の基礎知識と始め方!

FX外国為替取引の知識

 
2007年のある日、東京のインターパンク市場で、ディーラーたちを困惑させる不可解な現象が起きました。インターバンク市場とは、通貨の売り買いをする外国為替市場の中で銀行など金融機関同士が取引する場のことです。

午前中、相場が円高方向に動いていたものの、売買を担当するディーラーが昼食をとってデスクに戻ると、円安に変わっているのです。相場を反転させる何か新しい情報が流れたのかとチェックしても、それらしいものがありません。結局、何が起きているのかわからないまま、この事態に首をひねるばかりです。その後も、このような現象は何度も繰り返され、ディーラーたちの間ではいつしか「魔の昼休み」とささやかれるようになりました。

ところが、原因を探っていくと、驚くべきことがわかってきました。何とサラリーマンや主婦を中心とした個人のFX(外国為替証拠金取引)投資家が、時間のあく昼休みを利用してー斉に円売り・ドル買いの注文を出していたのです。さすがに百戦錬磨のプロでも、個人の投資家が大きなうねりとなって相場を左右させるほどの影響力をもっていたとは想像もできなかったのでしょう。

この現象は海外にまで伝わり、FX投資家を指す「ミセス・ワタナベ」という呼び名まで生まれました。その姿は、為替取引に高度な専門知識やノウハウをもたず、小口の資金を投じている個人投資家といえます。今や、経験豊かな為替ディーラーたちにとって素人にさえ見える「ミセス・ワタナベ」の動向が、マーケットを動かす大きなカとして認識されているのです。


 
毎年増大を続ける預り残高
個人によるFX投資が急激に拡大していることは、統計からもはっきりと読み取れます。最近の急成長ぶりには、目を見張るばかりです。FXの顧客からの預り残高ですが、2001年は323億円でしたが、その後、2004年までは前年と比較するとほぼ倍のペースで増加し、2005年以降も前年比5割増と着実に伸びてきて、2007年には6,133億円に達しています。

2007年の半ばに、アメリカでいわゆるサブプライム問題が発生しました。これによって、確かにFX投資家は打撃を受けたのですが、それでも業界の専門家たちは、2008年に預り金8,000億円規模に拡大するのではないかと推測しています。

新しい投資として幅広い層に支持を受けている
FXの口座数に目を向ければ、使われていない休眠口座を含むとはいえ、2001年3月の時点で1万1,000口座だったのが、2007年3月末になると64万4,000口座に膨れ上がっています。
1口座当たりの証拠金残高を見ると、1口座当たりの預り残高は、年を追うごとに小さくなっているのがわかります。手ごろな金額で投資できるFXの魅力が広く知られるようになり、投資家の裾野を広げていったのです。

それを裏付けるように、FX投資家を年代別に見ると、20代、30代の若い投資家が約60%を占めているといわれています。最近ではFX投資を始める女性の割合も上昇し、名実ともに「ミセス・ワタナベ」が増えているのです。


 
外国為替とは異なる通貨を交換すること
では、FXとはどういった金融商品なのでしょうか? FXを知るためには欠かせない外国為替の知識について学びましょう。

日本だったら円、アメリカだったらドルというように、世界の国々にはその国独自の通貨があります。通貨は、例外としてユーロがありますが、基本的にその国の中でしか通用しません。したがって、ほかの国と貿易するときや海外旅行するときには、自分の国の通貨を相手の国の通貨に交換する必要があるのです。このように、異なる通貨に交換することを外国為替といい、略して外為ともいわれます。また、交換する比率のことを外国為替相場、あるいは為替レートといいます。例えば、1ドル=100円や1ユーロ=150円といった為替レートは、「1ドルは100円と、1ユーロは150円とそれぞれ交換できる」という意味です。これは「1ドルは100円、1ユーロは150円で買えます」と言い換えることもできます。つまり、通貨は売ったり買ったりして交換しているのです。

通貨にも大根と同じように値段がある?
よくテレビのニュースで「昨日100円だったドルが買われ、現在の東京外国為替市場の円相場は102円で、昨日に比べ2円の円安ドル高です」といった報道を耳にすることがあるでしょう。これは円の値段は安くなって、ドルの値段が高くなった、という意味です。

実はモノに値段があるように、通貨にも値段があります。1個100円だった大根が110円になれば値段は高く、90円になれば安くなったということです。これと同じことが通貨にもいえます。


 
ややこしいのはドルを基準にした呼び方だから
ドルなどの外国通貨も前項の大根の例とまったく同じです。つまり1ドルが100円から110円になればドルが高くなったからドル高で、90円になればドルが安くなったからドル安です。

しかし、1ドルが100円から110円になって円安で、100円から90円になって円高というのはどういうことなのでしょうか。先ほどはドルを基準にして1ドルの値段が100円から110円に上がればドル高、90円に下がればドル安と説明しましたが、今度は円を基準にして考えてみます。

 1ドル=100円ということは1円=0.01000ドル
 1ドル=110円ということは1円=0.00909ドル
 1ドル=90円ということは1円=0.01111ドル

ということがわかります。1ドルが100円から110円になるというのは、1円が0.01000ドルから0.00909ドルになるということです。これは円の値段が0.01ドルから0.00909ドルに値下がりしたわけですから、円が安くなった、つまり、円安です。逆に、1ドルが100円から90円になるのは、1円の値段が0.01000ドルから0.01111ドルに値上がりしたことになるので、円高ということになります。
 
1ドル=110円という言い方はドルを基準とした言い方なのです。一般的に、外国為替相場を表示するときは、1ドル=○○円というようにドルを基準にして表示します。これはドルが世界で最も信頼され世界中で流通している通貨だからです。 ドルが果たしている、このような役割の通貨を基軸通貨と呼びます。


 
為替相場も野菜や魚の値段と同じように変動する
モノの値段が上がったり下がったりするのと同じように、通貨の値段である為替レートも常に変動しています。ここでは、為替レートがなぜ上がったり下がったりするのか説明しましょう。

レタスやキャベツなどの野菜や、サンマなどの鮮魚の値段は需要と供給、つまり、必要とされる量(需要)と売り出されている量(供給)の力関係で決まります。例えば、豊作・大漁で野菜や魚が多く市場に出回れば、供給が需要を上回り値段は下がります。逆に、不作・不漁のときは需要が供給より多くなり値段は上昇します。

為替相場も需要と供給の力関係で決まる
通貨の値段である為替レートも、需要と供給の力関係で決まります。ドルを買いたい人のほうが売りたい人より多ければ、ドルの値段は上がります。つまり、ドルに対する需要が供給より多いからです。逆に、ドルを売りたい人のほうが買いたい人より多ければ、供給が需要を上回りますのでドルの値段は下がります。

具体例をあげてみましょう。通貨の需要と供給に大きな影響を与えるのが貿易です。日本の会社が自動車や電気製品をアメリカに輸出すると、その代金はドルで受け取ります。 ドルを受け取った日本
の会社は、銀行でそのドルを売って円に替えます。というのも、ドルは日本の通貨ではないので、そのままでは日本国内で従業員の給料や材料費などさまざまな支払いに使えないからです。

このように、輸出企業は受け取ったドルを円に替えようと売るので、輸出が増えるとドルの供給が増えて円高ドル安の要因の1つになります。


 
円高ドル安はこんなことでも起こる
輸出以外にも「円の需要増・ドルの供給増」になるものとしては、外国から日本に対する投資があります。

日本の景気がよくなり、日本の株がこれから値上がりしそうだと外国の投資家たちが予想して日本の株式への投資を増やせば、円に対する需要が増えます。外国の投資家たちはドルやユーロなどの自分の国の通貨を円に替えてから日本の株式を買わなければならないからです。つまり、ドルやユーロを売って円を買うことになるのです。このように、外国から日本への投資が増えることは円高ドル安
につながるのです。

日本の輸入が増えたら為替はどう動くか
日本の輸入量が増加したり、輸入品の値段が上がったりして輸入額が増加した場合は為替の動きはどうなるでしょうか。結論からいえば、円安ドル高の要因になります。

輸入代金は通常ドルで支払われるため、輸入額が増えれば増えるほど輸入代金支払いのためにドルを用意しなければならないので、輸入する企業は円をドルに替えるからです。また、アメリカの株式が上がりそうだとか、金利が高くて日本で預金するよりアメリカで預金したほうが得だとかと投資家が判断すれば、ドルの需要増となります。アメリカに投資するときは円を売ってドルに替えるので、この場合は円安ドル高要因になるのです。

まとめると、日本から海外への輸出が増えたり、海外から日本への投資が増えると、円高ドル安になります。日本の輸入が増えたり、日本から海外への投資が増えると、円安ドル高になります。


 
世界が共有するサイバースペース
キャベツ、レタスなどの野菜やサンマなどの鮮魚は、卸売市場で売買されています。株式や債券などの有価証券は、金融商品取引所(旧証券取引所)で取引されています。

これらと同じように、通貨の取引は外国為替市場で行われます。しかし、市場といっても中央卸売市場や東京証券取引所のように実際に取引される場所があるわけではありません。よくテレビで円高
ドル安などの外国為替のニュースが大きく取り上げられると、円卓を囲んで何人もの人たちがどなりあったり伝票を放り投げたりする光景が映し出されますが、これは銀行間の円やドルの売買を仲介す
る外国為替ブローカー(仲介業)の仕事風景で、外国為替市場の一部分です。円やドルの売買は、銀行同士がコンピューターや電話で取引を行いますので、外国為替市場はサイバースペース上にあるといえます。

ひと昔前までは、外国為替取引はほとんど電話で行われていました。しかし、今ではほとんどの取引がコンピューターの通信ネットワークのスクリーンを通して瞬時に行われています。通信端末は全世界につながっていますから、24時間いつでも取引相手の顔が見えない状況で取引が行われているのです。端末さえもっていれば、いつでも最新情報を引き出すことができます。

世界の国々には時差がありますから、外国為替取引にもその市場によって時差があり、地球をぐるぐる回りながら取引されるのです。その中でもロンドン、ニューヨーク、東京が世界の三大市場と呼ば
れています。


 
外国為替市場にはさまざまな参加者がいる
東京外国為替市場は、ロンドンとニューヨークに次いで世界第3位の規模を誇ります。市場の参加者は、主に銀行などの金融機関と外国為替ブローカーです。

金融機関で実際に為替売買を行っている人のことを外国為替ディーラー(外為ディーラー)と呼びます。これに対して、外国為替ブローカー(外為ブローカー)とは、銀行間での為替売買を仲介する業者のことです。外為ブローカー自身が自分のために為替を売り買いすることは基本的にありません。売り注文と買い注文を仲介して手数料を受け取るという業務を行っています。かつては、為替売買のほとんどが外為ブローカーを通じて行われていましたが、最近では直接銀行間で取引を行うダイレクト・ディーリング(DD)の比率が高まり、外為ブローカーの担う役割が減ってきています。

外国為替法の改正で間口が広がった
1998年に改正外国為替法が施行され、取引は必ず日本政府から認められた外国為替公認銀行でなければならないという規制(為銀主義)が撤廃されました。その結果、商社や生命保険会社、損害保険会社、証券会社、メーカーなど、さまざまな外国為替市場の参加者が急速に増加しました。

これまで個人が外国為替取引を行おうとするなら、銀行を通してしか手段がありませんでした。しかし、現在ではFX会社や証券会社などが、銀行に比べ安価な手数料で小口の外国為替取引の商品を
提供しています。近い将来には、コンビニで外国通貨の両替もできるようになるかもしれません。


 
外国為替市場にも卸売りと小売がある
野菜や魚の値段は、まず中央卸売市場で決められます。ここで決められた値段が卸値です。スーパーなどの小売店は、この卸値に運送費や人件費などの経費と自分の利益を加え、小売値として野菜や魚を消費者に提供しています。卸売市場では業者間の取引なので大量の野菜や魚が取引され、消費者がキャベツ1個だけを卸売市場で買うことはできません。

同じように外国為替取引も卸売市場と小売市場があります。前者は銀行同士で取引されるインターバンク市場で、そこで取引される為替レートはインターバンクレートと呼ばれます。また、後者は銀行と顧客の間で行われる対顧客市場で、そこで取引される為替レートが対顧客レートです。

小さなスフレッドがFX取引の特徴
通常、卸値と小売値に差があるように、為替取引の場合もインターバンクレートと対顧客レートには差があります。インターバンクレートの場合、ドルでは売値(オファー)と買値(ビッド)の差(スプレッド)は1~3銭程度です。しかし、個人が外貨預金をするとき、銀行の売値(預金者から見れば買値)であるTTSと買値(預金者から見れば売値)であるTTBの差は2円にもなります。対顧客レートでは、差が大きくなるのです。

この点、多くのFX会社では、この差(スプレッド)が4銭程度とインターバンクレートに近く、大きなメリットになっています。FX会社と取引する限りにおいては、卸値と小売値の価格差はほとんどないといってもよいでしょう。